行政書士と宅建士のダブルライセンス取得を目指すのは、難しいですか?
取得することで得られる具体的なメリットが知りたいです。
士業の世界では、ダブルライセンス保有者は決して珍しくなく、行政書士でありながら宅地建物取引士(以下、宅建士)や社労士など他の分野の資格を保有している人は意外に多いです。
特に士業資格には、それぞれ独占業務が存在しますので、ダブルライセンス保有者は業務範囲が広がります。
業務範囲が広いといういことは、それだけで他の行政書士との差別化にも繋がります。
その他にも年収への影響や、転職市場での人材的価値の上昇など、さまざまなメリットが得られるでしょう。
この記事では、行政書士と宅建士のダブルライセンス取得を目指すための具体的な方法や、保有するメリット等に関して分かりやすく解説しています。
行政書士と宅建士は、試験範囲が被っている部分もありますので、短期間でまとめて取得を目指すのもありでしょう。
行政書士と宅建士のダブルライセンス取得のメリットとデメリット
行政書士と宅建士のダブルライセンス取得のメリットとデメリットに関しては、次のような項目が挙げられます。
メリット | デメリット |
---|---|
・業務範囲が広がる ・キャリアアップの機会が増える ・年収アップの可能性がある | ・取得費用がかかる ・取得に時間がかかる |
ライセンス取得に時間とお金がかかる反面、キャリアアップや収入アップに繋がる可能性があります。
行政書士・宅建士のダブルライセンス取得のメリット
行政書士と宅建士のダブルライセンス取得には、以下のようなメリットがあります。
業務範囲が広がる
行政書士は法律や手続きに関する業務を、宅建士は不動産に関する業務を行います。
両方のライセンスを持っていると、法律や手続きに関する業務だけでなく、不動産に関する業務にも対応できるため、業務範囲が広がります。
また、単体でライセンス保有している人よりも、より多くの業務がこなせるというのは、独立開業を考えている人にとっても大きな強みになるでしょう。
キャリアアップの機会が増える
両方のライセンスを持っていると、キャリアアップの機会が増えます。
それぞれのライセンスを持っているだけでは、できなかった業務に携われるようになるため、業務経験やスキルアップにもつながります。
また、両方のライセンスを持っていることで、企業側からも高い評価を受けやすくなるため、転職や昇進のチャンスが増える可能性が高いです。
年収アップの可能性がある
複数のライセンスを持っていることで、専門家としての価値が高まるため、高収入を得られる可能性があります。
行政書士だけしか資格を持っていな人よりも、他の士業資格を持っている知見が広い事務所に相談したい、と考える人も少なくありません。
また、双方の独占業務を扱えるようになるため、顧客に対するサービスの幅もより広くなり、多くのニーズを満たすことができます。
行政書士・宅建士のダブルライセンス取得のデメリット
行政書士と宅建士のダブルライセンス取得には、以下のようなデメリットがあります。
取得費用がかかる
両方のライセンスを取得するには、受験費用や学習費用等がかかります。
試験対策を行う際には、予備校や通信制講座などの外部サービスを利用するのが一般的であるため、総合的な学習費用は意外に高くつきます。
特に行政書士に関しては、難関資格の一つに数えられており、合格までの期間が長引けば長引くほど学習費用もその分掛かってしまうでしょう。
取得に時間がかかる
両方のライセンスを取得するためには、試験勉強のために時間を確保する必要があります。
試験名 | 合格に必要な勉強時間(目安) |
---|---|
行政書士 | 800〜1,000時間 |
宅建士 | 200〜500時間 |
仮に行政書士と宅建士のダブルライセンス取得を目指すとしたら、合計1,000〜1,500時間の学習時間が必要です。
社会人が働きながら、これだけの学習時間を確保するのは至難の業であり、事前に無理のない学習スケジュールを立てる必要があるといえます。
行政書士と宅建士のダブルライセンス取得後の転職での有用性
行政書士と宅建士のダブルライセンスを取得することで、就職や転職時の大きなアピール材料となります。
両方のライセンスを持っていることで、幅広い業務に対応できるため、転職先の選択肢が広がることでしょう。
雇用先によっては、給与面でも有利になる可能性があります。
就職や転職時のアピールポイント
行政書士と宅建士のダブルライセンスを取得した場合、就職や転職時にアピールできるポイントは次の通りです。
両方の分野に対する知識やスキルを持っている
行政書士と宅建士は、それぞれ異なる分野での知識やスキルが求められますが、両方のライセンスを持っていることで、広い視野で物事を見ることができます。
法律的な知識や実務経験を持っていることで、企業や組織にとって有用な人材としてアピールできます。
幅広い業務に対応できる
両方のライセンスを持っていることで、行政書士業務や宅建士業務に限らず、法律や不動産に関する幅広い業務に対応可能です。
そのため、企業や組織にとって、多彩な業務に対応できる人材としてアピールできます。
高い専門性を持っている
両方のライセンスを持っていることで、専門的な知識やスキルを持っているという点で、他の応募者との差別化が図れます。
行政書士や宅建士に限らず、複数のライセンスを持つことで、高い専門性をアピールできるでしょう。
ダブルライセンス取得者が活躍する分野や職種
行政書士と宅建士のダブルライセンス取得者が活躍する分野には、不動産業界以外にもさまざまな分野があります。
- 法律事務所、弁護士法人
- 自治体
- 行政機関
- 社会福祉法人
- 医療機関
- 商社
- 不動産開発会社 など
これらの分野で、法律や不動産に関する問題を取り扱う部署や業務に従事する場合には、ダブルライセンスを持っていると、就職や転職において非常に有利です。
また、ダブルライセンス取得者は、不動産業界においても多岐にわたる業務に携わることができます。
- 不動産物件の売買や賃貸借契約
- 相続、遺言書作成、相続税申告
- 土地の分筆・合筆
- 建物の登記簿謄本の取得
- 住宅ローンのアドバイス
宅建士には、不動産仲介業者や不動産会社において、不動産物件の仲介業務や営業業務に従事することもできます。
ただし、ダブルライセンス取得者が活躍する分野や職種は、その地域や市場の需要や状況によって異なるため注意が必要です。
行政書士と宅建士それぞれの仕事内容
行政書士と宅建士は、どちらも不動産や建物に関する法律に精通した専門家であり、それぞれの分野で重要な役割を果たしています。
ダブルライセンス取得を目指している人は、それぞれの資格がどのような業務に精通しているのかを、しっかりと把握しておくべきです。
行政書士の仕事内容
行政書士は、行政手続きに関する書類の作成や申請代理、法律相談、契約書の作成などを行う専門家です。
具体的には、届出や許可申請などの手続き、遺言書や相続手続き、会社設立や登記手続き、不動産登記手続き、労働問題の相談など、様々な分野にわたって活躍しています。
宅建士の仕事内容
宅建士は、不動産に関する様々な業務を行う専門家です。
具体的には、不動産仲介や管理業務、土地や建物の売買や賃貸借契約、相続、遺言書作成、相続税申告、土地の分筆・合筆、建物の登記簿謄本の取得、住宅ローンのアドバイスなどが挙げられます。
特に不動産物件の売買仲介業務に従事することが多く、契約書の作成や調査などに精通しています。
ダブルライセンス取得後の仕事内容の拡充
行政書士と宅建士のダブルライセンスを取得することで、両方の分野で活躍することができます。
たとえば、不動産業界で宅建士として働きながら、不動産物件の登記手続きなどの書類作成や法律相談を行うことができます。
行政書士として自治体や行政機関で働きながら、不動産登記手続きや契約書の作成、不動産仲介業務などにも携わることも可能です。
両方の分野での知識やスキルを持つことで、幅広い業務に対応でき、仕事の幅が広がることが期待できます。
行政書士と宅建士の試験内容と難易度(合格率)の違い
行政書士と宅建士の難易度を単純に比較した場合、行政書士の方が合格するのが難しいです。
資格名 | 合格率 | 勉強時間 | 偏差値 |
---|---|---|---|
行政書士 | 10%前後 | 800〜1,000h | 65 |
宅建士 | 15〜17% | 500h | 55〜59 |
総合的にみて行政書士試験の方が合格率が低く、合格までに必要な勉強時間も非常に多いです。
その上、合格者の平均偏差値を比較しても、行政書士の方が上であるため、宅建士よりも難しい試験であることが分かります。
最終的にダブルライセンス取得を目指すのであれば、どちらから合格を目指すのかが、非常に重要な選択となります。
行政書士試験の内容と難易度
行政書士試験は、民法や商法など法律の知識を問われる出題が中心です。
「行政書士の業務に関し必要な法令等」(出題数46題)
憲法、行政法(行政法の一般的な法理論、行政手続法、行政不服審査法、行政事件訴訟法、国家賠償法及び地方自治法を中心とする。)、民法、商法及び基礎法学の中からそれぞれ出題し、法令については、試験を実施する日の属する年度の4月1日現在施行されている法令に関して出題します。
「行政書士の業務に関連する一般知識等」(出題数14題)
政治・経済・社会、情報通信・個人情報保護、文章理解
出典:行政書士試験研究センター|一般財団法人
合格率は、10%前後と非常に低いようにも思えますが、他の法律系資格(司法書士、弁護士)等と比較するとかなり高い方です。
そのため、毎年一定数の合格者を輩出しており、一部では行政書士の母数が増え過ぎていることが、問題視されています。
宅建士試験の内容と難易度
宅建士試験は、不動産に関する知識を問われる出題が中心です。
民法(権利関係)、借地借家法、不動産登記法、区分所有法、国土利用計画法、都市計画法、建築基準法、土地区画整理法、農地法、宅地造成等規制法、税法、地価公示法、住宅金融支援機構法、公正競争規約、宅建業法
※50問・四肢択一式による筆記試験
出典:不動産適正推進機構|一般財団法人
士業資格の中でも特に人気が高い宅建士ですが、行政書士と比較するとそこまで難易度は、高くありません。
ただし、簡単に合格できる資格ではないため、取得を目指す際にはしっかりとした学習計画を立てて、取り組む必要があります。
行政書士と宅建士のダブルライセンス取得のための勉強方法
ダブルライセンス取得のためには、行政書士と宅建士のそれぞれの試験に合格する必要があります。
勉強の期間や時間は個人差がありますが、一般的には約12ヶ月から18ヶ月程度が必要とされています。
以下に、行政書士と宅建士における勉強のポイントや注意点を紹介します。
効率的に学習を進めるためにも、まずはあなたに適した学習計画を立てるようにしましょう。
行政書士試験の勉強法
行政書士試験は、法律知識を問われるため、法律の基礎をしっかりと固めることが大切です。
特に、憲法、行政法、民法、商法及び基礎法学などの法律分野が試験範囲となるため、それぞれの分野の基礎をしっかりと学ぶことが必要です。
また、試験に出題される問題の傾向をつかみ、効率的に勉強することが重要になります。
行政書士試験は、出題傾向が比較的安定しているため、過去問題集や模擬試験を活用することが有効です。
宅地建物取引士試験の勉強法
宅建士試験は、不動産の専門知識を問われるため、実務的な経験や知識が身につくような勉強法を取り入れることも効果的です。
行政書士と比較すると宅建士は、それほど試験範囲は広くありません。
しかし、民法をはじめとした法律問題も数多く出題されるため、暗記するのは大変困難です。
基礎的な知識を習得した後は、過去問や模擬試験を繰り返しながら、問題の傾向を把握し慣れることが重要になります。
行政書士と宅建士のダブルライセンス取得における費用と時間
ダブルライセンス取得にかかる費用や学習時間は、多くの人にとって大きな課題となっていますが、その負担を軽減する方法もあります。
既存の制度や無料教材などをフル活用して、できるだけコストを抑えるようにしましょう。
費用面の削減策
まず、費用面での削減策としては、講座代を安くすることができる補助金や助成金を活用することが挙げられます。
教育訓練給付制度などが、良い例でしょう。
また、各資格試験の受験料や教材の購入代金なども、節約することができる方法があります。
たとえば、オークションサイトやフリマアプリを利用して中古の教材を入手する、ネット上の無料配布教材を活用する、図書館で教材を借りる、等が挙げられます。
学習時間を削減する方法
学習時間を削減するための方法としては、学習計画を立てて時間を有効に使うことが挙げられます。
まずは、あなたがどの程度の勉強量をこなせるのかを把握し、それに応じた計画を立てます。その際、合間の空いた時間を有効活用することも大切です。
通勤時間や待ち時間などにスマホアプリで学習したり、音声教材を聞いたりすることで、効率的な学習が可能です。
行政書士と宅建士のダブルライセンス取得における注意点
行政書士と宅建士のダブルライセンス取得を目指している方は、次の項目に注意しましょう。
- 行政書士と宅建士は試験時期が近い
- ライセンスの更新を忘れないようにする
学習計画を立てる際には、それぞれの試験日に注意しましょう。
また、ライセンスを取得した後は、更新日等も配慮しておくべきです。
行政書士と宅建士は試験時期が近い
行政書士試験と宅建士試験は、それぞれ年に1回実施されますが、試験時期は11月上旬と10月下旬なので非常に近いです。
行政書士の試験時期 | 宅建士の試験時期 |
---|---|
①試験案内:7月頃 ②申込受付:7月下旬〜8月下旬 ⑤試験日:11月上旬 ⑥合格発表:翌年1月下旬 | ①試験案内:7月頃 ②申込受付:7月頃 ③試験日:10月上旬 ④合格発表:11月下旬 |
ダブルライセンス取得を狙っている人は、まずは行政書士もしくは宅建士のどちらかに絞った、学習計画を立てる必要があるでしょう。
1年間で双方同時に合格を狙うのは難しいため、学習計画を立てる際には十分試験日程を考慮した上で、立てるようにするのが賢明です。
ライセンスの更新を忘れないようにする
行政書士と宅建士のダブルライセンス取得後は、それぞれのライセンス更新について、留意する必要があります。
まず行政書士の場合は、行政書士会に登録しないという選択を取る人も珍しくありません。
登録しないことには、行政書士業務が行えないため、その点を考慮した上で判断する必要があります。
仮に行政書士会への登録を行なった場合、ライセンスの更新料はかからないものの、年会費(60,000~80,000円)が発生します。
また、宅建士の更新には、5年ごとに実施される講習会への参加が必要です。(宅建業法第22条の2第2項)
行政書士と宅建士のダブルライセンス取得に関するQ&A
行政書士と宅建士のダブルライセンス取得に関する多くの質問や悩み等の中から、特に多かった内容だけを厳選して、初心者にも分かりやすくまとめました。
ダブルライセンス取得には、想像以上に時間がかかるものですので、まずは一つずつ資格取得を目指していくのが賢明です。
Q.行政書士や宅建士は独学では難しいですか?
行政書士や宅建士は、独学で学ぶことは可能ですが、その難易度は非常に高いです。
試験に合格するためには、法律や制度に関する幅広い知識が必要であり、それを独学で習得するには多大な労力と時間が必要となります。
加えて、正確な知識だけでなく、試験で求められるスキルや戦略も重要です。
独学で学習する場合、スキルや戦略を磨くための指導やアドバイスが得られないことが多いため、合格率が低下することが予想されます。
そのため、初心者であれば専門の予備校や通信講座などを利用して、より効率的な学習を行うのが一般的です。
独学でも決して不可能ではありませんが、自己管理能力や学習効率を高めるスキルが必要とされます。
Q.行政書士と宅建士はどちらが将来性がありますか?
両資格ともに需要があり、将来性がある資格とされていますが、将来性について一概にどちらが優れているとは言えません。
需要の変化に対応するために、業界動向や社会情勢の変化に敏感に対応し、さまざまなスキルを身につけることが大切です。
また、両資格を取得することで、より幅広い業務に対応することができるため、将来的にも有利な状況になる可能性があります。
Q.行政書士と宅建士の両方を保有していた方が年収が上がりますか?
行政書士と宅建士の両方を保有していると、専門性が高く、様々な業務に携わることができるため、年収アップにつながる可能性があります。
ただし、保有資格が年収に直結するわけではなく、経験や能力、市場価値などによって年収が決まります。
両資格を取得するためには、それぞれの試験に合格するための努力や時間、費用が必要になるため、単に年収アップを目的に両資格を取得することは推奨しません。
自己の興味や将来のキャリアパスなどを考慮して、資格取得を検討することが重要です。
Q.行政書士や宅建士等の資格の活かし方を教えてください。
それぞれの業務分野で役立つ知識やスキルを身につけることができるため、活かし方によっては、多岐にわたるキャリアアップの道が開ける可能性があります。
次に、具体的な活かし方をいくつか紹介します。
資格名 | 資格の活かし方 |
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行政書士 | ・行政手続き代行業務の開業 ・不動産取引における登記申請代行業務 ・個人事業主の起業支援業務 ・企業の法務担当として、契約書作成や労働法務関連業務を担当 |
宅建士 | ・不動産仲介業務の開業 ・不動産投資家のサポート業務 ・不動産開発会社の営業や企画業務 ・建築会社の営業や設計業務 |
ダブルライセンス 保有者 | ・不動産取引に関する業務全般を行う不動産取引業者としての開業 ・中小企業の経営サポートや起業支援を行うコンサルタントとしての開業 ・公的機関での仕事や弁護士事務所でのサポート業務 |
尚、行政書士や宅建士以外にも様々な資格があり、それらを併せ持つことでキャリアアップの幅を広げるのも有効的な手段です。
Q.行政書士や宅建士は求人が少ないと聞いたのですが本当ですか?
行政書士や宅建士の求人数は、一般的な職種と比べると少ないと言われていますが、地域や時期によって異なります。
特に大都市圏や人口密集地では、需要が高く求人が多い傾向があります。
民間企業においても行政書士や、宅建士の資格を持った人材を求めるケースが増えてきています。
求人数が少ないと言われる理由として、資格に対するニーズがあるために、受験者数が増えて競争率が高くなっていることも考えられるでしょう。
まとめ
行政書士と宅建士のダブルライセンス取得を目指す、メリットとデメリット等に関して、初心者にも分かりやすく解説しました。
メリット | デメリット |
---|---|
・業務範囲が広がる ・キャリアアップの機会が増える ・年収アップの可能性がある | ・取得費用がかかる ・取得に時間がかかる |
双方、試験日がとても近いため、最短1年間の内に取得を目指すのは、非常にハードルが高いです。
そのため、学習計画を立てる際には、十分試験の難易度や試験日等を考慮した上で、無理のない計画を立てるようにしましょう。
「千里の道も一歩から」と言われるように、まずは身近なところから着手していきましょう。
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