行政書士の廃業手続きや、再登録の方法について知りたいです!
実際に廃業した人はその後どうしているのでしょうか?
「2022年版小規模企業白書」の資料によると、個人事業主の廃業率は全体の3.3%という結果が出ています。
統計学的な数値だけでみると、行政書士の廃業率は低いように感じます。
しかし、ネット上には独立して数年後には約5割が廃業している、という噂も絶えません。
噂はあくまでも噂に過ぎず、行政書士資格を既に保有している人であれば、その後の選択肢は意外に多いです。
この記事では、行政書士の廃業手続きや再登録の方法、廃業してしまう人にありがちな理由や原因等に関して、分かりやすく解説しています。
最後まで読んでいただくことで、行政書士の廃業リスクに備えることができる上に、その後のキャリアプランに関しての参考にもなるはずです。
行政書士として廃業したからといって、そこで人生が終わってしまう訳ではありません。
その後の選択肢は多数あるため、冷静になって次のステップに進みましょう。
行政書士における廃業の定義
行政書士において廃業とは、法律事務所や個人事業主として、行政書士としての業務を行わなくなることを指します。
つまり、行政書士としての活動を停止し、業務を終了するということです。
廃業理由としては主に、自己破産や倒産などの経済的理由によるものや、定年退職や病気などの身体的理由によるものが挙げられます。
廃業する場合には、一定の手続きが必要となるため、法的な知識が必要です。
また、行政書士である者が、何らかの犯罪等を起こした場合「行政書士法第二条の二 欠格事由」に則り、厳正な処分が下されます。
事業の廃業基準は、個人によって様々です。引くに引けない状況にまで追い込まれる前に、早々に撤退することが大切です。返済不可能なまでの債務を負ってまで事業を続けるのは、無謀だといえます。
行政書士の廃業に関するよくある理由
行政書士が廃業する理由としては、次のような項目がよく挙げられます。
- 顧客数の減少:資格取得しただけでは業務依頼はこなかった
- 収入の減少:単発業務が多く収入が安定しなかった
- 業務負担の増加:プライドが高く、全部自分でやろうとしていた
- 経営不振:現状に満足し新規顧客の開拓を行なっていなかった
- 健康面の問題:健康管理ができずに事業継続を断念した
ざっくり言うと、経済的な理由か心身の健康的な理由に分けられます。
前者は、営業と集客に注力することで解決しますが、後者は個人の自己管理能力に依存します。
顧客数の減少|資格取得しただけでは業務依頼はこなかった
行政書士の仕事は、顧客からの依頼に基づいて行政手続きや、法律事務を行うことが主な仕事です。
行政書士試験に合格したからといって、その後すぐに独立開業した人が稼げるようになる訳ではなく、大半の人が顧客の獲得に悩みます。
集客やマーケティング等の知識やスキルがない状態で独立開業してしまい、思うように顧客獲得に繋がらず、業務依頼が半年以上こない人も珍しくありません。
収入の減少|単発業務が多く収入が安定しなかった
行政書士の収入は、依頼された仕事の報酬によって得られます。
依頼件数が減少したり、依頼された仕事の金額が低くなってしまったりすると、極端に収入が減少することもあるでしょう。
単発業務が多い傾向にある行政書士業務では、どれだけ継続的に依頼をしてもらえる顧客を捕まえるかが、事業存続の鍵になります。
業務負担の増加|プライドが高く、全部自分でやろうとしていた
行政書士は、行政手続きや法律事務を行うことが主な仕事ですが、業務量が増加することによって、業務負担も比例して増加します。
解決策としては一部業務を外注したり、あなた自身が営業だけに着手して業務自体は、他の業務委託契約を行なっている行政書士に任せたりなどが挙げられます。
しかし、全て一人で業務を行っている場合には、業務負担が増えると時間や体力的に限界に達してしまい、廃業に至る場合もあるため注意が必要です。
経営不振|現状に満足し新規顧客の開拓を行なっていなかった
行政書士法人や法律事務所を経営する場合には、収支のバランスが取れなくなったり、財務面でのトラブルが起こったりすることがあります。
その結果、事業を継続することが難しくなり、廃業する訳です。
行政書士だから安泰という訳ではなく、どの職業であっても5年後10年後も残っているとは、言い切れません。
現状に満足せずに常に新規顧客を開拓したり、新しい事業に挑戦したりといった試みが大切です。
健康面の問題|健康管理ができずに事業継続を断念した
行政書士業務は、長時間のパソコン作業や書類作成などが多く、身体にかかる負担が意外に大きいです。
ストレスや過労によって、心身ともに疲弊してしまうこともあります。このような健康面の問題によって、廃業に至る場合もあるので注意が必要です。
心身共に健康でないと高いパフォーマンスは出せませんので、定期的に健康診断を受けたり、運動したりといった身体のケアを怠らないよにしましょう。
行政書士の廃業手続きと掛かる費用
行政書士の廃業手続きの一般的な流れとしては、次の通りです。
- 廃業届を最寄りの税務署に提出する
- 行政書士会の登録を解約する
- 状況を整理し会計処理を行う
- 確定申告を行う
- 消費税の還付申請と廃業に伴う書類の提出を行う
具体的な手続きや手続きの方法は、個人や事業の状況によって異なるため、会計士や税理士等の専門家のアドバイスを受けることも検討しましょう。
また、廃業するタイミングに関してですが、一般的には取引先との精算を全て済ませた後が、ベストだと言えます。
こちらでご紹介している廃業手続きは、あくまでも個人事業主のケースです。
法人の場合は、個人事業主とは異なり廃業手続きが面倒ですので、専門家に一度相談することをおすすめします。
廃業届を最寄りの税務署に提出する
行政書士が個人事業主として事業を行い、その後廃業する場合、最寄りの税務署に行って「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出しなければいけません。
廃業届の提出に際して手数料等は、一切かかりません。ただし、提出期限は廃業した日から1ヶ月以内です。
注意点としては、廃業してから行なった支出等が経費に換算されない可能性があるため、廃業日の決定は慎重に決めるようにしましょう。
廃業届に関しては、提出しなかったとしてもペナルティ等はありませんが、法律上は提出するように明記されています。
提出しないで放置していると、税務署から通知がくる可能性もため、廃業を決めた後は手続きを忘れないようにしましょう。
また、青色申告を辞める際にも、別途届出が必要です。
行政書士会の登録を解約する
行政書士が廃業する場合は、行政書士会の登録を解約する必要があります。
具体的な手順としては、まず登録している都道府県行政書士会に「行政書士登録抹消届書」を提出します。
「行政書士登録抹消届書」のPDFに関しては、日本行政書士会連合会の公式サイトから、無料でダウンロード可能です。
合わせて「行政書士登録証・政書士証票・行政書士会会員証」を返却したら解約手続き完了です。
より詳しい手続きのやり方に関しては、所属している各都道府県の行政書士会に、直接問い合わせてください。
状況を整理し会計処理を行う
廃業する場合には、会計処理を行う必要があります。
事業の終了時点で、負債や資産を評価し、債権者への債務の返済を行います。また、未収入金の回収や未払金の支払いなども忘れてはいけません。
会計処理を専門家に依頼する場合には、別途費用が発生します。具体的な費用は、事業の規模や処理内容によって異なりますので注意しましょう。
確定申告を行う
仮に廃業したとしても、その年度の事業所得の確定申告は行わなければいけません。
確定申告のやり方に関しては、廃業したからといって特別何かする必要もないです。
確定申告の時期に関しても、例年通り翌年2月16日から3月15日の間に行う必要があります。
他に何かわからない点がある場合は、国税庁の申告相談コーナーを活用してください。
消費税の還付申請と廃業に伴う書類の提出を行う
課税事業者として登録されている方は、申請を行うことで消費税の還付を受け取れる場合があります。
通常、確定申告と同時に消費税の申告も行いますが、課税事業者を辞める場合は「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出する必要があります。
簡易課税制度を利用している人であっても、消費税に関する提出書類がありますので、国税庁の公式サイトで一度確認しておきましょう。
行政書士の廃業に関するぶっちゃけ話し【実例・体験談】
実際に行政書士として業務を行っている方で、廃業を検討されている人やすでに廃業手続きを済ませて、その後の人生を歩んでいる人の口コミを集めてみました。
「行政書士になったならプロなんだから役所に基本的なことを聞きに行くな。
わからないことがあったら俺に聞きに来い。俺は最後まで面倒を見る。」という先輩いましたけど、そういうのに頼る人ならサラリーマンやってた方がいいと思います。
実際に頼ったやつらは、こき使われただけで廃業してますね。
出典:Twitter
独立開業した行政書士の間にも、地域によっては上下関係があるところもありますが、結局のところ事業存続できるかはあなた次第です。
他人に頼るのも一つの方法ですが、まずは自分自身で考えて行動することが大切です。
私の独立の原点は行政書士試験。働きながら資格を取って開業して実際に売り上げも上げていた。ただ、なんやかんやあって会社員やって、メンタルやられて廃業。
行政書士の業務ができないので、さぁどうするかとなったときにブログにしようと思った。動画と文章なら文章でしょうという単純な理由。
出典:Twitter
行政書士だから行政書士業務だけを行わなければいけない、という訳ではありません。
中には、行政書士資格の権威性を活かしてWebライター業を行ったり、ブログやYouTube等で発信活動を行っている人もいます。
行政書士会の研修にはあまり期待しないくらいがちょうどいいです。
講師は「現役の行政書士」が多く、つまりは実務のプロであり、教えることのプロではないからというのが理由の一つ。
「具体例」は聞けるのですが、抽象化が浅く再現性あるか?と言われると疑問な研修が多いのも事実です。
出典:Twitter
各都道府県にある行政書士会では、定期的に勉強会やセミナー等が開催されています。
独立後も自学研鑽することは非常に良いことですが、セミナー等に参加したとしても、売上が上がる訳ではありませんので注意しましょう。
行政書士の廃業後の進路とその後人生【キャリアプラン】
行政書士が廃業した場合、その後の進路としては次のような選択肢が考えられます。
- 新しい職業に転職する
- 新しいビジネスをはじめる
- 退職生活を過ごす
あなたがこれまで培った経験や知識、ライフスタイルに合わせて、慎重に判断していくようにしましょう。また、一度キャリアプランを練り直すことも、忘れてはいけません。
新しい職業に転職する
行政書士として廃業した後は、民間企業や行政書士事務所に転職するのも一つの選択肢です。
たとえば、これまでの経験を活かして法律事務所や企業の法務部門、人事部門、総務部門、財務部門などで働くことができます。
無理に資格を活かした転職を考える必要もないため、場合によっては他業界に転職し、キャリアチェンジするのもありでしょう。
注意点としては、業種や職種は変えずに業界だけを変えるという点です。
業種まで変えてしまうと、これまで培ってきた法律の知識やスキル等が役に立たず、またゼロベースから学習することになります。
業界だけシフトすれば、それだけで年収や待遇などが変わる上に、働きながらダブルライセンス取得を目指すこともできます。
新しいビジネスをはじめる
行政書士として廃業した後、他の新しいビジネスを始めるのも選択肢の一つです。
たとえば、不動産業や起業支援、顧問税理士として独立するなどが挙げられます。
その他、行政書士業務で得られた知見を活かしてWebライター業を始めたり、これまでの失敗談をブログやYouTube等で同業者向けに発信したりなども良いでしょう。
事業アイディアは沢山ありますので、一度失敗したからといってネガティブな思考に陥らず、失敗をバネに前向きに取り組むべきです。
退職生活を過ごす
行政書士を廃業した後には、そのまま退職生活を過ごす人も珍しくありません。
行政書士全体の平均年齢は55歳前後なので、中には年齢的な理由で廃業を選択する人もいます。
廃業した後は、地方で老後生活を送ったり、思い切って海外でのんびりと老後生活を謳歌するのも一つの選択肢です。
また、年齢的にまだ働き盛りな人も、一時的に人生の夏休みを取るという選択肢も悪くありません。
行政書士として再登録する方法
行政書士として廃業した後に、また行政書士会に再登録する方法としては、一般的に新規登録のやり方と同じ手順で行います。
登録に差し当たり、申請費用・登録料・前納会費・印紙などの経費がかかりますので、その点を考慮しておきましょう。
各都道府県の行政書士会によって事情が異なる場合もありますので、一度確認した上で再登録するべきか判断するのが賢明です。
再登録に関して気になる点がある場合は、日本行政書士会連合会の公式サイトからも、問い合わせ可能です。
行政書士の廃業とその後に関するよくあるQ&A
行政書士の廃業やその後の人生に関する多くの悩みや質問等の中でも、特に多かった内容だけに絞って、分かりやすくまとめてみました。
同じような悩みを持っている同業者も多いので、一度仲間内で相談するのもおすすめです。
Q.士業の中だとどの職業が廃業率が高いですか?
士業においては、職種によって市場需要が異なるため、廃業率の高い職種は一概にはいえません。
参考までに次の表は、中小企業庁が公開している2022年度における、個人事業主の業種別の廃業率ランキングです。
士業は、サービス業に分類されるため、統計的な順位だけで判断すると、中間程度の廃業率の高さだと言えます。
Q.行政書士の廃業率はなぜ高いと言われるのですか?
行政書士の廃業率が高い理由には、次のような要因が考えられます。
収入の不安定性
行政手続きの需要は、時期や地域によって大きく変動するため、収入が不安定であるという問題があります。
競合が激しくなると、手数料の下落も考えられます。
営業力の不足
行政書士の業務は、行政手続きの代理・補助業務に限定されているため、法律的な問題については対応できないことが多いです。
そのため、営業力や顧客開拓力が不足すると、顧客獲得が難しくなります。
管理能力の不足
行政書士の開業は、個人事業主として行われるため、経営や事務処理など、ビジネススキルが必要です。
専門職である行政書士が、これらのスキルを持ち合わせているとは限りません。
そのため、経営面での課題が発生し、廃業に至ることもあります。
Q.行政書士に将来性はありますか?
行政書士は、公的機関との仲介業務や法律に関するアドバイス、手続きの代理・補助などを行う専門家であり、現代社会において必要不可欠な存在です。
行政手続きや法律手続きが複雑化している現代社会において、行政書士の需要は増加傾向にあります。
たとえば、法人の定款変更や個人情報保護法の規制緩和、新型コロナウイルス感染症対策など、行政書士が関わる業務が増加しています。
行政書士の業務は、官公庁や民間企業、個人まで幅広い分野に及びますので、需要が多岐にわたることも魅力的な点です。
Q.行政書士を辞めた人はその後どうしているのでしょうか?
行政書士を辞めた人のその後の進路は、個人差がありますが、次のようなケースが考えられます。
他の士業への転身
行政書士としてのキャリアを積んだ後、弁護士や司法書士、税理士などの士業に転身するのも一つの選択肢です。
ダブルライセンス取得者の中には、行政書士という資格を一つの登竜門として、考えている人も少なくありません。
キャリアチェンジ(転職)
行政書士の経験やスキルを生かして、官公庁や民間企業での就職を目指すケースも非常に多いです。
法律関係の仕事以外にも、人事や総務など、行政書士の専門的知識を活かせる仕事に転職するのもありでしょう。
Q.行政書士資格はなぜこんなに人気があるのでしょうか?
行政書士資格が人気の理由には、次のような要因が考えられます。
社会的需要の高さ
行政書士は、行政手続きや契約書の作成、法人設立、相続手続き、労働問題など、広範囲にわたる分野で活躍が求められています。
近年の少子高齢化や地方創生の動きに伴い、地方自治体での需要も高まっています。
低資本で開業ができる
行政書士は、法律家と比較して、開業に必要な資本や設備が少ないため、比較的手軽に開業することができます。
そのため、独立を希望する人にも人気があります。
資格取得までのハードルが低い
行政書士の資格は、大学などで法学を学ぶ必要がなく、高校卒業程度の知識で取得できます。
そのため、比較的他の士業資格と比べてハードルが低く、多くの人が挑戦しやすい資格の一つです。
働き方が多様である
行政書士は、独立開業者や法律事務所、企業の法務部門、行政機関など、様々な場所で働くことができます。
フルタイムで働かずに、家事や育児の合間に仕事をすることも可能です。
働き方によっては、完全在宅リモートワークで働くこともできます。
まとめ
行政書士の廃業手続きと、再登録の方法に関して解説しました。
廃業手続きに関しては、次の通りです。
- 廃業届を最寄りの税務署に提出する
- 行政書士会の登録を解約する
- 状況を整理し会計処理を行う
- 確定申告を行う
- 消費税の還付申請と廃業に伴う書類の提出を行う
また、再登録に関しては各都道府県の行政書士会に、改めて新規登録する必要があります。
仮に行政書士として廃業したとしても、培った経験やスキル、知識等が失われる訳ではありません。
ポジティブに良い機会だと捉えて、次のステップに進むことが大切です。
再起を図る際には、一度立ち止まって今後のキャリアプランに関して十分考えた上で、少しづつでも良いので行動に移していきましょう。
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