こんにちは、宅建講師の大野翠です。
今回は令和4年度宅建本試験問題の中から、法令上の制限に関する重要論点の解説をおこないます。
法令上の制限は、全体50問のうち8問です。権利関係が14問、宅建業法が20問の出題があることを考えると、法令上の制限の8問は少なく感じるかもしれません。しかし、法令上の制限は非常に重要なテーマであり、決して後回しにできない範囲です。
もっとも、不動産実務において法令上の制限の知識は必須であり、顧客の住環境を守るためにも優先されるべき知識といえます。本試験では、8問中少なくとも5~6点は得点したいところです。
法令上の制限・令和4年の出題状況について
まず、令和4年の本試験における出題状況を確認しましょう。出題番号および出題内容は次の通りです。
・問15 都市計画法
・問16 都市計画法(開発許可)
・問17 建築基準法
・問18 建築基準法
・問19 宅地造成等規制法
・問20 土地区画整理法
・問21 農地法
・問22 国土利用計画法
出題状況や出題順に関しては、ほぼ例年通りでした。
例年通りという意味では、都市計画法と建築基準法が2問ずつ出題されるうち、各1問ずつが難易度の高い問題だったことも挙げられます。令和4年の出題では、都市計画法のうち問16(開発許可)、建築基準法では問17が少々細かい論点を問う内容でした。
宅地造成等規制法、土地区画整理法、国土利用計画法に関しては基本的な知識が定着していでば十分に得点できる内容でした。一方、例年は得点源にしやすい農地法が難しく苦戦した受験生も多かったようです。
難易度の高い問題を攻略するより基本論点を確実に得点しよう
令和4年の本試験問題も、都市計画法と建築基準法では各1問ずつ細かい論点が出題されました。ただし、選択肢すべてが細かいというわけではないため、難易度の高い細かい論点の問題であっても選択肢ごとの確認は必要です。
問16 都市計画法(開発許可)
都市計画法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。ただし、この問において条例による特別の定めはないものとし、「都道府県知事」とは、地方自治法に基づく指定都市、中核市及び施行時特例市にあってはその長をいうものとする。
1 市街化区域内において、市街地再開発事業の施行として行う1haの開発行為を行おうとする者は、あらかじめ、都道府県知事の許可を受けなければならない。
2 区域区分が定められていない都市計画区域内において、博物館法に規定する博物館の建築を目的とした8,000㎡の開発行為を行おうとする者は、都道府県知事の許可を受けなくてよい。
3 自己の業務の用に供する施設の建築の用に供する目的で行う開発行為にあっては、開発区域内に土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律に規定する土砂災害警戒区域内の土地を含んではならない。
4 市街化調整区域内における開発行為について、当該開発行為が開発区域の周辺における市街化を促進するおそれがあるかどうかにかかわらず、都道府県知事は、開発審査会の議を経て開発許可をすることができる。
問16 解説
2が正しい内容で正解肢です。2は、規模にかかわらず開発許可が不要となる「公益上必要な建築物」について問われています。公益上必要な建築物は博物館以外に、駅(鉄道施設等)、図書館、博物館、公民館、変電所があります。開発許可をテーマとした出題では、頻出論点ですので必ず抑えましょう。
1は、規模にかかわらず市街地再開発事業の施行として行う場合は開発許可不要です。これも頻出論点です。
3は、かなり細かい論点です。いわゆるレッドゾーンに関する内容を出題していますが、レッドゾーンに該当するのは土砂災害特別警戒区域です。選択肢をしっかり読んでみると、土砂災害警戒区域について問われています。土砂災害特別警戒区域内の土地を含んではならないという規制はありますが、土砂災害警戒区域に関してこのような規制はありません。したがって、誤った内容となります。
今回の3のような出題傾向は、法令上の制限でよく見られます。正式な文言ではない言い回しを敢えて出題し、受験者の「読み飛ばし」や「確認不足」で不正解となってしまうひっかけです。このことから、法令上の制限では問題文を落ち着いてしっかり読み、必要であれば下線を引きながら一言ずつ確認して解く習慣をつけておくと良いでしょう、
4は「当該開発行為が開発区域の周辺における市街化を促進するおそれがあるかどうかにかかわらず」の箇所が誤りです。開発区域の周辺における市街化を促進するおそれがない場合に限られているため、「あるかどうかにかかわらず」は不適当な内容ということになります。選択肢1や2に比べると、細かい論点ではありますが確認しておきましょう。
問17 建築基準法
建築基準法(以下この問において「法」という。)に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
1 法の改正により、現に存する建築物が改正後の法の規定に適合しなくなった場合には、当該建築物は違反建築物となり、速やかに改正後の法の規定に適合させなければならない。
2 延べ面積が500㎡を超える建築物について、大規模な修繕をしようとする場合、都市計画区域外であれば建築確認を受ける必要はない。
3 地方公共団体は、条例で、建築物の敷地、構造又は建築設備に関して安全上、防火上又は衛生上必要な制限を附加することができる。
4 地方公共団体が、条例で、津波、高潮、出水等による危険の著しい区域を災害危険区域として指定した場合には、災害危険区域内における住居の用に供する建築物の建築は一律に禁止されることとなる。
問17 解説
3が正しい内容で正解肢です。問題文通り、地方公共団体は条例により制限の附加が可能です。よく出る論点ですので、必ず抑えるようにしましょう。
1の既存不適格建築物についても、頻出論点です。旧法令の基準を満たしている建物が、すぐに違法建築物になることはありません。したがって、速やかに改正後の法規定に適合指せる必要もありません。
2は「延べ面積が500㎡を超える建築物」とありますので、木造か非木造かにかかわらず大規模建築物に該当します。大規模建築物の大規模な修繕は建築確認が必要です。木造と非木造の建築物の種類に関する問題は、過去にも繰り返し出題されています。頻出とまではいきませんが、出題されやすい論点であることから、本問題で再度確認しておきましょう。
4は、細かい論点で難易度の高い内容です。4の論点を抑えるよりも、優先順位としては1~3を確実に理解しましょう。ちなみに、災害危険区域内の建築物の建築に関して「一律に禁止」ということではありません。あくまでの地方公共団体が条例等で規制した場合には、禁止されることもあります。したがって、ここでは「一律」という表現が不適切であるという理解で良いでしょう。
まとめ
法令上の制限は、各種法令の範囲が広く対策が取りづらいと感じる人も少なくないでしょう。今回紹介した問題でも、選択肢によっては深入り厳禁であったり、優先順位の低い内容もありました。
宅建学習において総じていえることですが、やはり過去問から離れない学習は大事です。見たことのない内容や、聞いたことのない用語などが問題中に出てきた場合、一旦保留にして他の選択肢から解答してみましょう。時には消去法で正解を導き出すこともテクニックとして必要な場合があります。
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