令和4年度宅建本試験問題・重要論点解説「民法」

宅建
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こんにちは、宅建講師の大野翠です。
今回テーマとして取り上げるのは、令和4年度の宅建本試験問題のうち民法(問1~問10)の重要論点についてです。
令和4年度の合格点数は36点でした。そのうち今回解説する民法部分(10問)に関しては、やや難しい印象でした。

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民法の出題テーマについて

問1-10までの出題テーマは次の通りです。

  1. 判決文問題(背信的悪意者)
  2. 相続(遺留分放棄・相続放棄)
  3. 制限行為能力者(改正点)
  4. 抵当権
  5. 期間(計算)
  6. 賃貸借と使用貸借の比較問題
  7. 失踪宣告
  8. 地上権・賃借権
  9. 辞任
  10. 時効(取得時効)

問5,7,9に関しては、軽く一読程度で深入りしないほうが良い問題です。これまでの頻出論点でもなく、市販のテキストや資格スクールの教材にもほとんど掲載されていないような内容です。そのため、令和4年度問題を基にテーマごと振り返りや知識定着をはかっても、今後繰り返し出題される可能性は低いと考えられます。

それよりも学習の優先順位が高いのは、毎年出題あるいは一定の周期で出題されるテーマです。問2,4,6,8,10に関しては、テーマごとの関連知識も交えて学習しましょう。なかでも抑えていただきたい問題について、引き続き解説します。

問2・相続(遺留分放棄・相続放棄)

例年、相続の問題は問11から始まる特別法の直前あたりで出題されることが多いです。そのため、相続の問題が問2で出題されて驚いた人も少なくないでしょう。さらにいうと、問1でいきなり判決文問題が出題されたことも驚きでした。

問2の問題文はこちらです。

【問2】相続に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。

  1. 被相続人の生前においては、相続人は、家庭裁判所の許可を受けることにより、遺留分を放棄することができる。
  2. 家庭裁判所への相続放棄の申述は、被相続人の生前には行うことができない。
  3. 相続人が遺留分の放棄について家庭裁判所の許可を受けると、当該相続人は、被相続人の遺産を相続する権利を失う。
  4. 相続人が被相続人の兄弟姉妹である場合、当該相続人には遺留分がない。

選択肢3が、誤りの内容で正解肢です。

選択肢ごとに確認していきましょう。

1は、問題文通り正しい内容です。ポイントとなる部分は、遺留分の放棄は生前でも可能であり、あらかじめ家庭裁判所の許可を受ける必要があるということです。

2も問題文通り正しい内容ですが、文末に注意しましょう。相続放棄は「生前には行うことができない。」選択肢1では、遺留分放棄に関して生前OKである内容でしたが、2の相続放棄は生前NGであるという知識が問われています。この論点は、セットで覚えておきましょう。

3は誤った内容で正解肢です。本文の前半部分では遺留分放棄の許可を得、後半部分では「当該相続人は、被相続人の遺産を相続する権利を失う」とあります。つまり選択肢3は「遺留分放棄の許可を得たら、遺産相続の権利を失う」という内容について問われています。遺留分放棄と相続放棄は、全く別の制度であるため、遺留分放棄をしたからといって、相続する権利を失うわけではありません。前述した選択肢1と2の解説の通り、そもそも遺留分放棄と相続については、違う制度であることを理解しておきましょう。

4は正しい内容で、遺留分に関する基本論点かつ頻出論点です。「兄弟姉妹に遺留分なし!」ことわざのように繰り返し覚えましょう。

問6・賃貸借と使用貸借

問6の賃貸借・使用貸借の比較問題も抑えてきたいテーマです。これまでの宅建試験では、このような類似の論点について比較する問題が繰り返し出題されています。このほか民法では「賃貸借・借地借家法」、宅建業法では「35条書面・37条書面」などです。

類似の論点は、比較しながらまとめて覚えるのが良いでしょう。知識の整理にもなりますし、実際に比較問題として出題される可能性も高いからです。

今回の問6では、賃貸借の中でも後回しになりやすい使用貸借に関する出題でした。使用貸借とは「タダ貸し」のことです。つまりタダで貸しているので、賃貸借よりも立場が弱いというざっくりとしたイメージでも良いでしょう。

賃貸借や使用貸借については、2021年(令和3年)に国家資格化された賃貸不動産経営管理士で深く学びます。賃貸不動産経営管理士は、業者への設置義務のある業務管理者となりうる資格であり、宅建士と非常に密接した職種です。

このことから、宅建と賃管を同時に学習している人も多いようです。そのため、仮に宅建も賃管も学習している受験生であれば、使用貸借に関する出題は優位となることも考えられます。

対策として、宅建のみ受験する人でも、賃貸借・使用貸借に関しては少なくとも過去問レベルの知識定着は確実にしておきましょう。合否の差がつかないように対策を取っておくと安心です。

まとめ

令和4年度の民法部分は、10問中半分程度の得点が目安です。見たこともない問題、テキストにも乗っていないテーマの問題を攻略するよりも、毎年繰り返し出題されている論点について優先的に確認しましょう。

特に今回紹介した相続は、毎年必ず出題されています。賃貸借もほぼ毎年出題されており、特に使用貸借や借地借家法との比較問題は頻出です。類似のテーマは比較しながら学習することで、試験本番の対策にもなりえます。限られた学習時間を有効活用するためにも、過去の出題形式も参考にしながら学習を進めると良いでしょう。

大野翠

合同会社芙蓉宅建FPオフィス代表(宅地建物取引士/2級FP技能士)
宅建士・FP技能士の資格取得講師の傍ら、資格を生かした専門記事執筆は年間240本以上担当。
保険を売らない独立系FP・どこにも所属しないフリー宅建士として公平中立な立場で幅広く活動している。

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