今回は、学科の6教科の最初の1科目「ファイナンシャルプランニングと資金計画」のうち「公的医療保険」について詳しく解説していきます。
社会保険とは、医療保険、介護保険、年金保険のほか、広義では労働保険も含めた公的保険精度の総称を指します。
今回は社会保険の中の「医療保険」について詳しく解説したいと思います。
3つの公的医療保険
日本では、誰もが公的医療保険に加入しなくてはならない「国民皆保険制度」という制度があります。
公的医療保険は誰もが加入しなくてはなりませんが、加入することで医療費が3割負担で済んだり、病気で働くことができなくなったときに給付金を受け取れたりするなどメリットもあります。
公的医療保険には以下の3つの種類があり、どの保険に加入しなければならないかは働き方や年齢によって変わります。
- 健康保険…会社員やその扶養家族などが対象
- 国民健康保険…自営業者やフリーター、その家族などが対象
- 後期高齢者医療制度…75歳以上の人が対象
健康保険と国民健康保険
健康保険には、「全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)」と「組合管掌健康保険」の2つがあります。それぞれ特徴を押さえましょう。
全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ) | 組合管掌健康保険 | |
保険者 | 全国健康保険協会 | 企業の健康保険組合 |
保険料 | 都道府県ごとに異なる | 組合ごとに異なる |
保険料負担 | 労使折半 | 原則、労使折半 |
主な対象者 | 中小企業の従業員 | 大企業の従業員 |
国民健康保険は、市町村が保険者の場合と、国民健康保険組合が保険者の場合の2つの場合があります。
このうち、国民健康保険組合が保険者の場合は、特定の事業・業務に従事している人のみを対象とします。保険料負担は全額個人負担になります。
健康保険の加入対象者
健康保険では、法人の場合は全ての事業所、個人事業主の場合は常時使用する従業員が5人以上の場合、原則として健康保険の適用事業所になります。
パートやアルバイト、派遣社員等の非正規雇用の場合でも、1週間の所定労働時間と1か月の所定労働日数が一般従業員の4分の3以上であれば、加入対象者になります。
上記の条件を満たさなくても、次の要件を全て満たす場合には加入対象者になります。
- 従業員501人以上の企業に勤務
- 1週間の所定労働時間が20時間以上
- 月額賃金が88,000円以上
- 雇用期間が1年以上の見込み
- 学生ではない
また、健康保険の適用事業所で働く役員や従業員だけでなく、その被扶養者(3親等以内の親族等)も健康保険の加入対象者になります。
健康保険の被扶養者になるには要件があり、年収が130万円未満(60歳以上の場合や一定の障害がある場合は180万円未満)で、かつ被保険者の年収の2分の1未満(被保険者と別居している場合は、被保険者からの仕送りの金額未満であること)である親族が対象になります。
※2020年4月から被扶養者の要件に「原則として国内に居住していること」が追加されました。
居住の有無は住民票(住民基本台帳に登録)で判断されます(海外に在住している場合でも留学や転勤に同行しているなど一定の要件に該当する場合は2020年3月以前と同様、被扶養者として認められます)。なお、被扶養者は保険料を納める必要はありません。
健康保険の6つの給付
健康保険には以下6つの給付があります。しっかり押さえましょう。
療養の給付(業務外で病気やケガをした時の医療費の給付)
業務外の病気やケガに対して3割の自己負担(69歳以下)で外来、入院による医療給付を受けることができます。
自己負担割合は年齢や所得で違いがあり、小学校入学前の児童は2割負担、70歳から74歳までの人も2割負担(ただし現役並の所得があれば3割負担)、75歳以上は1割負担(ただし現役並の所得があれば3割負担)となっています。
高額療養費(医療費が自己負担限度額を超えた時の給付)
健康保険では、同じ月の1か月間の医療費の自己負担額が基準金額を超えた場合、超えた分の払い戻しを受けることができる高額療養費制度があります。基準金額は所得により異なり、所得が多い人ほど基準金額は高くなります。
なお、事前に自己負担限度額適用認定証を提示していれば、窓口での負担額は自己負担限度額までになります。
先進医療の技術代や差額ベッド代(大部屋ではなく個室のベッド利用した場合の使用料の差額)、食費などは高額療養費の計算に含むことができません。
傷病手当金(業務外の病気やケガで働けなくなった時の給付)
傷病手当金は、同一の病気やケガで給与が支給されない場合の給付です。
病気やケガで働くことができず、連続して3日以上休業した場合、休業4日目から最長1年6か月間、標準報酬日額(過去12か月の標準報酬月額の平均を30日で割った金額)の3分の2に相当する金額の給付を受けることができます。
業務外の病気やケガが対象であり、業務上や通勤中のケガや病気は労災の対象であることは、療養の給付と同じです。
出産手当金(出産前後に給与が受けられない時の給付)
出産のため会社を休業し給料が支給されない場合、標準報酬日額の3分の2に相当する金額が、出産日以前42日(多胎妊娠は98日)から出産日の翌日以後56日間にわたり支給される制度です。
支給金額は傷病手当金と同じなのが特徴です。
出産時一時金・家族出産一時金(本人や家族が出産した時の給付)
出産育児一時金は、被保険者本人または配偶者が出産した場合に一児につき42万円が支給される制度です。
産科医療補償制度加入病院での出産が条件で、産科医療補償制度未加入の病院での出産の場合、支給額は40万4,000円となります。
産科医療補償制度とは、分娩に関連して発症した重度脳性麻痺の子どもとその家族の経済的負担を補償するための制度で、現在ほとんどの分娩機関が加入しています。妊娠4ヶ月以上の出産で支給され、流産や死産であっても支給されます。
埋葬料・家族埋葬料(業務外で本人や家族が死亡した時の給付)
被保険者や被扶養者が死亡した場合、埋葬料として5万円が支給される制度です。
国民健康保険の給付
最後に国民健康保険の場合の給付について確認します。
結論から言うと、国民健康保険の給付内容も前述の健康保険とほとんど同じです。異なる点として以下の2つが挙げられます。
- 国民健康保険では、傷病手当金や出産手当金は任意給付のため、加入する国民健康保険によっては給付がないケースもある。
- 業務上のケガや病気でも保険金が原則給付される。
まとめ
今回は学科の6教科の最初の1科目「ファイナンシャルプランニングと資金計画」のうち「公的医療保険」についてお伝えしました。
この教科では、覚えることが多く勉強が大変ではありますが、それぞれのポイントを押さえれば試験に対応できるようになりますので頑張りましょう。
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