簿記検定の中でも、「日本商工会議所及び各地商工会議所主催 簿記検定試験(日商簿記検定)」は、知名度の非常に高い資格の1つです。
3級を持っているだけでも「簿記の基本的な知識は身についている」というアピールになりますが、より強くアピールしたいなら、簿記2級を目指しましょう。3級より2級のほうが、なにかと役に立つ点が他にもあるのが事実だからです。
そこで今回の記事では、日商簿記検定2級と3級の違いに触れつつ、せっかくなら2級を目指すべき理由について解説しましょう。
※なお、本記事では特に注記がない限り、日商簿記検定のことを「簿記検定」と呼びます。
簿記2級と3級の5つの違い
まず、簿記検定2級と3級の違いについて、さまざまな面から比較しましょう。
1.試験内容が違う
簿記検定2級と3級とでは、試験科目が異なります。
3級では商業簿記のみが出題されるのに対し、2級では工業簿記(原価計算も含む)が加わり、勉強すべき範囲もはるかに広くなるのです。商業簿記と工業簿記の違いを簡単にまとめると、以下のようになります。
- 商業簿記:企業外部との取引を記録、計算し、企業の利害関係者(株主、取引先、経営陣など)に対し適切かつ正確な報告(決算書作成)をするためのもの。
- 工業簿記:企業内部で部門別・製品別に材料、燃料、人力などの資源の投入を記録・計算し、正確な製造原価を求め、適切な経営管理を行うためのもの。
なお、商業簿記は2級でも出題されますが、3級の知識が身についているのはもちろん、2級になって初めて出てくる知識も多いです。気を引き締めて取り掛かりましょう。
2.社会的評価が違う
「簿記3級は履歴書に書けないからムダ」と身もふたもないことを言う人がいます。しかし、簿記2級のほうが、3級よりも社会的評価が高いのも事実です。中途採用で一般企業の経理や会計事務所に転職する場合も「簿記2級以上取得済み」が応募の条件になっているのは珍しくありません。
また、高校生のうちに簿記2級を取得しておけば、推薦で大学に合格できる可能性も出てきます。経済・経営・商学系の学部に振り分けられることがほとんどですが、もともとそのような分野の勉強に興味があるなら、悪い話ではないでしょう。
いずれにしても「経理の現場で求められるだけの知識を身に付けている人」として高い評価が得られるはずです。
3.難易度が違う
簿記3級と2級とでは、難易度が全く違います。
第156回(2020年11月15日実施分)から第161回(2022年6月12日実施分)の試験について、合格率の推移を見てみましょう。
試験回 | 3級合格率 | 2級合格率 |
156(2020.11.15) | 47.4% | 18.2% |
157(2021.2.28) | 67.2% | 8.6% |
158(2021.6.13) | 28.9% | 24.0% |
159(2021.11.21) | 27.1% | 30.6% |
160(2022.2.27) | 50.9% | 17.5% |
161(2022.6.12) | 45.8% | 26.9% |
出典:日本商工会議所「商工会議所の検定試験 簿記 受験者データ」
回によってかなりばらつきがあるので一概には言えませんが、簿記3級のほうが2級より合格率が高いのに違いありません。
4.必要な勉強時間が違う
一般的に、簿記3級の合格に必要な勉強時間の目安は100時間ほどと言われています。一方、2級の場合は250時間~350時間とはるかに長いです。結局は簿記の学習経験があるか、仕事で経理知識が求められるかにもよりますが、ある程度腰を据えて取り組まないと2級に合格するのは難しいでしょう。
5.独学ができるかで違う
簿記3級は独学でも十分合格可能です。
2級もまったく無理とまでは言いませんが、その後簿記1級や税理士試験を目指す人は専門学校への通学も検討したほうが良いでしょう。
また、独学だとモチベーションが続かないという人も、専門学校を利用したほうが良いかもしれません。
せっかくなら簿記2級を目指すべき理由は?
ここまでの内容を踏まえて、せっかくなら簿記2級を目指すべき理由を考えてみましょう。
就職、転職に有利
わかりやすい理由として挙げられるのは、転職、就職に有利であることです。同じ簿記検定でも、3級よりは2級のほうがはるかにアピール力は強くなります。
結局、内定をもらえるかどうかは人柄や企業が求めるものとのマッチ度合いにもよるので、資格があるから有利とまでは言えません。
しかし、他の条件がまったく同じなら、より難易度の高い資格があるほうが有利に働きやすいのも事実でしょう。
他の上位資格のステップアップにできる
税理士や公認会計士など、他の上位資格のステップアップのきっかけにも、簿記2級は使えます。これらの資格では、簿記2級程度の知識が当然のように身についている上で学習しないと太刀打ちできない内容もたくさん出てくるためです。
特に、税理士は令和5(2023)年の試験から、会計科目(簿記論・財務諸表論)について受験資格を撤廃します。誰でも受けられるようになるので、簿記2級の勉強で手ごたえを感じれたなら、果敢にチャレンジしてみましょう。
ネット試験の導入でいつでも受けられるのでぜひ受験を!
簿記2級には、ネット試験が導入されています。予約制である上に、施行休止期間があるものの、基本的にはいつでも自宅の最寄りのテストセンターで受験が可能です。自分のペースで勉強し、余裕を持って受験できるので、ぜひチャレンジしてみてください。
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